『憲法で読むアメリカ史』 上下 阿川尚之
憲法制定以降のアメリカ史を、最高裁判所の下した憲法判断をもとに、それに関係する、その判決の背景にある社会的、経済的な問題を考えていく。
アメリカ史では、特に南北戦争と奴隷問題は、かなり長い間、争点として存在しているように思われる。南北戦争の当初は、その目的は連邦制の維持であって、奴隷解放が目的とされたのは戦争が始まって以降のことであった。連邦制の中で、南部の州と北部の州では産業構造がことなるので、経済政策で利害が異なる。この対立から、連邦を離脱しようとする南部対それをさせたくない北部、という構造だった。
憲法制定当初は、最高裁が違憲審査権を持っていると憲法の条文はなかったというのも驚きではある。憲法制定時の経緯がその理由となるのだが、なんとも不思議な国だと感じる。
連邦最高裁判事の個性も豊かである。この部分は面白いと思う。日本だとだれがだれかよくわからないし、最高裁長官がだれか知っている人はほぼいない。アメリカでは、大統領が指名する、それを上院が認めるか認めないかと審議する。大統領は、共和党なら保守派の判事、民主党なら左派の判事を指名する。9名の判事の構成が保守派優勢か、左派優勢か、によって判決の傾向も変わってくる。
アメリカの歴史と裁判所の役割について、詳しく知れて興味深かった。